イギリスで家を15件内覧して分かった、「見送る理由」の統計 〜日本人が最初に知るべき却下基準〜

イギリス不動産

イギリスで実際に15件の物件を内覧した記録から、「見送った理由」を統計的に整理。価格でも立地でもない、日本人が見落としがちな却下基準とは。


イギリスで住宅購入を目指して、これまでに15件の物件を実際に内覧しました。

日本にいた頃、家探しといえばスーモやホームズで条件検索して、モデルルームか築浅物件を数件見て決める。

そんなイメージでした。しかしイギリスの中古住宅市場では、内覧は「確認」ではなく「ふるい落とし」のプロセスです。写真と実物のギャップが日本の比ではないからです。

この記事では、15件の内覧を「なぜ見送ったか」という軸で振り返り、統計的に整理してみます。これから英国で家探しをする方が、内覧前のスクリーニング精度を上げる材料になれば幸いです。

見送り理由の内訳

15件の内訳を、主たる却下理由で分類すると以下のようになりました(複数理由がある場合は決定打となったものでカウント。筆者の実体験に基づく集計です)。

却下理由件数直せるか
採光・間取りの構造的問題4件直せない
内装の老朽化(想定改修費が予算超過)3件直せる(が高い)
価格が相場比で割高3件交渉次第
立地・通勤動線2件直せない
競争で敗退(オファー負け)2件
検討継続中1件

最大の学び:「直せるもの」と「直せないもの」を最初に分ける

15件を振り返って得た最大のフレームワークは、この二分法です。

直せないもの: 採光(部屋の向き・窓の配置・隣家との距離)、間取りの骨格、天井高、立地、通勤動線、周辺環境。これらは購入後にいくらお金をかけても変えられません。

直せるもの: 内装、キッチン・バスルーム、断熱(EPC評価)、庭の状態。これらはお金と時間で解決できます。むしろ「直せる問題で敬遠されて安くなっている物件」は狙い目になり得ます。

私たちが終盤で見送ったある物件(ビスター南東部の4ベッド戸建て)は、価格分析上は明確に「買い」でした。同じ通りの成約事例と比較して割安で、印紙税の特例も使える価格帯。しかし内覧してみると、間取りに起因する採光の悪さ、上記の分類でいうと直せない問題があり、パートナーの「ここには住みたくない」という直感が決め手になって見送りました。

数字がどれだけ揃っていても、自己居住の家は毎日そこで暮らす人間の感覚が最優先です。逆に言えば、数字の分析は「感覚で気に入った物件を、高値掴みせずに買う」ためにある。これが15件を経た私の結論です。

日本人が見落としがちなチェックポイント

日本の住宅感覚とのギャップで、特に注意すべき点を挙げます。

1. EPC(エネルギー性能証明書)を必ず確認する

日本の内覧では断熱性能を数値で確認する習慣がほとんどありませんが、イギリスでは全物件にEPCというA〜G評価の証明書があります【一次:政府のEPC登録簿で誰でも無料閲覧可能】。

評価が低い(E以下)物件は光熱費が高く、将来の賃貸規制リスクもあります。

詳しくは別記事「EPC Eの家は買いか」で書きます。

2. 「築年数」の感覚を捨てる 日本では築30年は「古い家」ですが、イギリスでは1930年代築が普通に現役です。重要なのは単なる築年数ではなく、直近のメンテナンス履歴(屋根・配管・ボイラー・電気系統)です。

3. 写真は最大限よく撮られているし、フォトショップなどで加工されているのが前提。

広角レンズと明るい加工は標準装備です。15件中、写真の印象を実物が上回った物件は1件もありませんでした【筆者の実体験】。

特に「暗さ」は写真から絶対に分かりません。可能であれば、内覧は晴れた日の日中にまずしてみるのをお勧めします。晴天なのにダイニングホールが暗いのであれば、それは上記の直せないカテゴリーのものかもしれません。

4. フロアプランの面積表記を確認する

イギリスの物件情報には複数の面積定義が混在しています(RICS基準のGIA、EPC上の床面積、ポータルサイトの表記)。同じ物件で10㎡以上ズレることもあります。

これも別記事で詳しく解説します。

内覧数は多すぎるか?

「15件は見すぎでは」と思う方もいるかもしれません。

しかし英国の家探しでは、内覧を重ねることで初めて自分たちの却下基準が言語化されるという効果があります。

私たちの場合、10件を超えたあたりで「エリアはここ」「採光は妥協できない」「内装は仕上がっている方を選ぶ(改修前提の割安物件は選ばない)」という基準が固まりました。

最初の3件でこれが分かっていたとは思えません。ゆえに、逃した物件も存在しています。

内覧は無料です。基準が固まるまでの内覧コストは、数十万ポンドの買い物における最も安い保険だと考えています。

まとめ

  • 15件中、決定打となった却下理由の最多は「採光・間取りの構造的問題」(直せない問題)だった
  • 「直せる/直せない」の二分法を内覧前のスクリーニングに組み込むべき
  • 数字の分析(相場・税制・利回り)と、住む人の感覚は役割が違う。両方必要
  • 内覧数を重ねること自体に「基準の言語化」という価値がある

次回は、見送った物件の一つを題材に、「同じ通りの成約価格から指値を組み立てる方法」を具体的な数字で解説します。


本記事は筆者個人の体験と公開情報に基づくもので、不動産取引・税務・投資の助言ではありません。実際の購入判断にあたっては、RICS調査士・ソリシタ・税理士等の専門家にご相談ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました